羊と鋼の森 ~どうして腕時計を右に着けるのか~

先日公開された「羊と鋼の森」

早速ですが観に行ってきました🐑🌲🎹


まあとにかく映像が美しい!

原作の美しい言葉の世界がそのまま映像になっていました。

雪国の温度、質感、深い森の風景が目の前に広がっている様な、、、

とても美しく懐かしい気持ちにしてくれる作品でした。


調律師目線で見ても、作業の工程がとても綿密に描かれていて、思わずなるほどな~と感心してしまいました。

本当に素晴らしいです。


そこで特に気になったのが、主演の山崎賢人さん演じる外村や他の調律師が腕時計を右腕にしていることです。


彼らは別に左利きという訳ではありません。


調律師が時計を右腕に着ける理由

①ピアノを保護するため

当たり前ですが、まずこれ。

あと左手は終始、鍵盤を叩いているので大きい時計だと重くて腕が疲れるし雑音がする。


②時間を確認するため

一般家庭の場合は時間を気にせず心ゆくまで作業出来るのですが、コンサート調律など時間に制限のある仕事の場合、後ろに分単位で会場設営やリハーサルの時間が決められています。
なので時間を確認しながら作業するのはとても重要になってきます。

時計が右腕だとハンマーを動かしならが常に時間が確認できてとても便利です。


③そもそもの調律において必要

実は時計(秒針付きのアナログ)は、調律の作業においても非常に重要なんです。

調律師は1秒に1回&2秒に1回の音の唸りを聞いて平均律というものを作ります。

実際、調律学校入りたての頃はそれぞれが時計を持参し、秒針を見ながら平均律を作ったりします。


調律に慣れてきて、一秒の感覚が体に染みついたら時計を見なくても作業できるのですが、(私ももう大分昔に右手時計は卒業しました)


きっと外村はまだ駆け出しなので、しっかりと基本にならって右腕にしてるんだな〜と思い何だかとても懐かしい気持ちになりました!


話を本編内容に戻しますと、

技術不足な自分に悩み葛藤する外村を見ていて、思わず昔の自分と重ねてしまい胸が苦しくなりました。

それと同時に忘れかけていた大切な気持ちを呼び覚まして貰えました。


ひたむきに調律に向き合い切磋琢磨していく外村の姿は、きっと調律師や音楽関係者では無くとも、下積み時代がある全ての方の胸を打つと思います。


本当に温かく、希望に満ち溢れた作品です。

是非沢山の方にご覧になって頂きたいです。


私も外村のように「どうしたら調律って上手く出来る様になるんですか…」と日々葛藤しております。



でもきっと、終わりのない世界だからこそ楽しく、とてもやりがいがあるのでは無いかと思います。


辛かった事も沢山あって、本当に何度辞めようと思ったかわかりません…


けどそんな事を何度も乗り越えて、少し強くなった今は、調律が楽しくて仕方がないです☺



・石の上にも三年

・当たって砕けろ



私の人生においてのテーマです。(笑)



はのんピアノ調律サービス

世田谷区を拠点に活動している 調律師歴15年の女性ピアノ調律師です。 ピアノに関するお悩みが御座いましたらお気軽にお問合せ下さい。

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